テレビに新聞、雑誌、電車の中吊りからウェブまで、私たちが広告を1度も見ずに過ごせる日はないと言っても過言ではありません。
そして日々よりよい広告を届けるために、広告代理店もまた欠かせない業種となっています。今回は広告代理店の概要から、業界トップ3の電通、博報堂、アサツー・ディ・ケイ(ADK)の強みと社風を徹底解明いたします!
そもそも広告代理店って何?
テレビ局や新聞紙、ウェブサイトなどのメディアは、広告を掲載できる枠を持っています。しかしかれらが「広告出してくれませんか」と無数のクライアントへ営業し、広告制作を担当することは現実的に難しい。そこで広告代理店の出番です。
彼らはメディアの代わりに広告を出してくれそうな会社へ営業し、一緒に広告を制作してくれます。こうしてテレビ局のCM枠は埋まり、そのCMを出す代わりに受け取ったお金でさらに視聴率へ貢献できるような番組を作ることができます。
広告代理店の中でもトップ3の電通、博報堂、ADKの3社は大手メディアと専属契約を結ぶことで「○○テレビに広告を出したければ電通へ」「このウェブサイトへの出稿なら博報堂」といった企業ごとの強い媒体を持っています。次の項目で、各企業が持つメディアや、社員の風土などを解説していきます。
電通:広告界の絶対王者
日本の広告代理店最大手でありつづける電通。その理由は、テレビ広告との強いつながりです。電通の社風は一言で言えば「体育会系」。お笑い芸人にも負けないガッツと体力で、数々の日系企業と太いパイプを作っています。
社交的で気がきく接待は、サービスだけでは差をつけにくい広告代理店業界で一歩リードする強力な武器です。“とにかく人数で押せと言われる(電通マン)”と言う声に代表されるように、勝負所には総力戦をかけるのが特徴。「コネクションと営業力で仕事を取る」という、まさに王者の戦略と言えるでしょう。
仕事の特徴では、大型の広告案件も多く飛び込んでくるため、入社時からスケールの大きな仕事に携わりやすい企業といえます。広告は使える費用で購買できるメディアやスケールが大きく変わるため、スケールの大きい仕事で売上をガツンとあげ、爽快感を味わいたいならぜひ電通を第一志望群へ入れたいところです。
2013年のイギリス系広告代理店イージスの買収で、実はその社風にも変化のきざしが。通常、買収された企業が買収元へ影響をおよぼすことは少ないのですが、買収元のイージスが世界中に拠点を置くグローバル企業だったことから社風にも変化の風を呼び起こしており、電通も部分的に成果主義を導入しはじめているとのことです。
また近年、海外でのM&Aを通じて、電通のグローバル化はさらに加速しており、グローバルの広告業界においても存在感のある企業へと変貌を遂げつつあります。実際、売り上げのうち海外事業が約51%を占めるほどです。それに伴い、近年はグローバル採用も強化しているようです。電通のグローバル進出については、アニュアルレポートを是非ご覧ください。
- 電通 アニュアルレポート2015:サマリー
- 電通 アニュアルレポート2015:グローバルでのポートフォリオ多極化について
博報堂:スタイリッシュな個人主義。そう見えて、実は……?
業界2位の博報堂は、一時は「クリエイティブの博報堂」とあだ名で呼ばれるほど製作部門が強く、佐藤可士和などの著名なクリエイターを数多く輩出してきました。
また、緻密な戦略に基づいた合理的な広告戦略に定評があると言われ、ユーザーデータを使った広告投資手法をいち早く開発するなどコンサルタントにも共通するロジカル・シンキングを鍛える場となるはずです。
社風は電通とは一線を画す個人主義。体育会系の接待とは異なり、データに裏づけされた営業やスタイリッシュな物腰が志望学生にも人気です。たとえるならネクタイ1本でも電通社員は上司の空気を読んで選び、博報堂ならオシャレなブランドネクタイで訪問することでしょう。合コンで派手に飲むのが電通マンなら、博報堂は社内婚や仕事を通じて……など恋もクールに堅実と言われます。一方、“ぱっと見は電通マンの方がチャラそうだけど、博報堂の方がしたたかで実はタチが悪い(30歳・女性)”という声も……。
なお、外資系広告会社TBWAとの合弁会社もグループに入っており、そちらは6年連続で「クリエイティブ・エージェンシー・オブ・ザ・イヤー(Campaign Asia Pacific)」を受賞するなど、アジアを代表する会社になっています。入社後のキャリアパスも用意されているようですので、グローバル思考が強い方はTBWA/HAKUHODOを目指してみるのもありかもしれません。
アサツー・ディ・ケイ(ADK):温和な社風と確固たる強み
アサツー・ディ・ケイ(ADK)といえばアニメとラグジュアリー。そう断言できるほど強みが明確に決まっているのがADKの特徴です。業界3位ではあるものの、ドラえもんやガンダムといった有名作品の製作に携わる一方、グループ会社のADKマインドシェアではルイ・ヴィトンやChristian Diorなどラグジュアリーブランドの広告を一手に引き受けます。
社風としては穏やかな性格の人が多くいらっしゃり、広告代理店のガツガツしたイメージと違うためにOB・OG訪問で驚かれる方もいるかもしれません。温和な方が多く、家庭を大事にする方も多いようです。広告代理店の営業といえば接待が多い印象もありますが、1次会で解散して家族の元へ帰っていく姿も。
電通・博報堂の力強さに気おされて「広告代理店の空気は苦手かも」という方こそ、ADKでは最高の能力を発揮できるかもしれません。採用では特に「なぜ電通・博報堂ではないのか」を問われることになるため、志望動機は入念に準備しておきたいところです。
おわりに
以上、ここまで各広告代理店のビジネスから社風までご説明してまいりました。こうして詳しく記すと「広告代理店」という枠だけでは語りきれない差異があるとわかるはずです。
協調性たっぷりの社交パーソン、クールな理論派営業、おっとりしたスペシャリスト……あなたはこの中からどういう人材に近づきたいでしょうか?業界でひっくるめてエントリーする前に、なりたい自分ベースで志望企業を絞る資料になれば幸いです。