マーケティングの概念自体は、そんなに複雑なものではありません。おさえておくべきキーワード、考え方は実は、以下くらいです。これは、新しいモノではなく、いわゆるマーケティングの基本書には必ず載っている類のものです。
1)ベネフィット
お客様があなたの商品を買うのは、商品自体が欲しいのではありません。商品がお客様にもたらす何か良いこと、それを買っているのですノ。
ドリルを買うのは、ドリルという器具ではなく、穴が欲しい
コーヒーを飲むのは、黒い液体ではなく、リラックスが欲しい
高級車に乗るのは、1t の精密機械ではなく、見栄がはりたい
後半の青の太字の部分が、ベネフィットと呼ばれるものです。お客様が欲しい、何か良いこと、問題解決、なのですね。
お客様は、あなたの商品が欲しいわけではない。自分にとって良いことが欲しい。当たり前のことですが、ついつい忘れがちなことです。
2)競合商品との差別化と強み
しかし、そのベネフィットを満たそうとしているのはあなただけではありません。競合商品が存在します。その競合商品よりも、あなたの商品を買わなければいけないことをお客様に納得していただく必要があります。
競合商品と全く同じであれば、安い方を買うでしょう。あなたがコストリーダーであればそれでも良いかもしれませんが、これはなかなかきつい話です。価格競争力を持つのは素晴らしいことですが、価格だけで勝負すると、体力勝負になってしまいます。天下のマクドナルドだって、価格だけでは勝負していません。
競合商品ではなく、あなたの商品を買う理由、競合商品との違いをお客様に訴える必要があります。
小売店の場合、扱っている商品が競合店と同じこともあるでしょう。それでも、あなたの店から買う理由を納得していただく必要があります。そうでなければ、泥沼の価格競争になり、負けた方は退場、買った方も傷だらけ、となります。
では、何を持って差別化すると言うかと、あなたの会社の強みを使うのです。普通、弱みで差別化することはありませんから、「差別化ポイント=あなたの強み」ということになります。あなたが競合他社より強いところで差別化しようとしなければ、負ける、追いつかれるだけです。
強みが無いことも実は多いのですが、それに対する答えは簡単。
・探しましょう。無ければ、もう一度探しましょう。
・作りましょう。競合よりも努力に努力を重ねて作りましょう
ということになります。
お客様は正直です。よりお客様にとって便利な方、より役立つ方、よりたくさんの情報を提供してくれる方、より見やすい方、より愛想のよい方、などから買うわけです。それぞれが強みの例です。
強みがない、ということはありません。必ず何かはあるはずです。
3)セグメンテーションとターゲティング
あなたの強みがわかったら、または、決まったら、それを評価してくれるお客様はどんな人かを探りましょう。
あなたの強みを評価してくれないお客様を長期的に維持するのは難しいです。もちろん、評価してくれなくても、買っていただければそれでいいのですが、それを頼りにすると、売上が安定しません。そのお客様が評価する強みを提供する顧客に簡単に奪われてしまいます。
あなたの強みが、きめ細やかなサービスなのであれば、それを評価してくれるお客様を定義するのです。
セグメンテーション、というのは、お客様を分けることです。ターゲティングは、その分けたお客様のどれかに絞って狙いをつけることです。
なぜ絞らないといけないのか?
絞らなければ絞った競合に負けるからです。私が、全ての会社を対象としたコンサルティングを提供しているとしましょう。競合のコンサルタントさんが、メーカー向けのコンサルティングを提供したら、メーカーさんはそちらに行くでしょう。別のコンサルタントさんが、小売業向けのコンサルティングを提供したら、小売業さんはそちらに行くでしょう。お客様を絞らずに多くのお客様を取ろうとすると、絞ってきた競合に負けるのです。
あなたがある市場を独占していればいいですが、通常は競合(広い意味での競合も含めて)が存在します。ですから、絞るのです。
セグメンテーションとターゲティングは常にセット
絞らない、狙わないのであれば、分ける(セグメンテーション)必要はありませんし、狙うためには、分けることが必要です。ですから、セグメンテーションとターゲティングは常にセットになります。
4)4P
具体的にどのように差別化して、どのようにお客様を絞っていくか、という切り口が4Pです。4Pは、
Product(製品):売り物の商品・サービス
Price(価格):値段・価格体系
Promotion(販促):広告などを含む広い意味での売り方です
Placement(流通):販路
マーケティングの4Pは、マーケティングの本には金科玉条のごとくに出てきますが、ある意味当たり前のことです。
ポイントは、あなたの強みを、あなたの強みを評価する顧客に訴えられるような4Pはどんなものか、ということです。
お気づきの通り、マーケティングの基本原理は単純です(簡単とは言ってませんよ。単純なのと簡単なのは全く違うことです)。当たり前のことです。
このような基本原理は、どんなマーケティング本にでも多分書いてあります。が、バラバラに書いてあることが多いので、わかりにくいんですよね……まとめれば、単純なことです。
お客様が求めているベネフィットは何か?
ベネフィットを満たす上で、自分の差別化ポイントは何か?
その差別化ポイント評価してくれるお客様はどんな方か?
具体的にどんな4Pで差別化するのか?
という流れで考えれば、全体に整合性・統一性が必要であることはおわかりでしょうし、そんなに難解な考え方でないことはご納得いただけると思います。
この4つの理論でマーケティングの本質をわかりやすくえぐりだした入門書が拙著、「ドリルを売るには穴を売れ」です。詳細はこちらからどうぞ。
もちろん、他にも色々な考え方は手法はありますが、基本中の基本はこんなものです。もう全てわかった、ということであれば、後は実戦に励むのみ。