マーケティングミックスには様々な理論がありますが、4P理論と4C理論に的が絞られつつあります。概論と事例から分かりやすく説明します。
マーケティングミックスの意味
マーケティングミックスとは、
「マーケティング戦略において、望ましい反応を市場から引き出すために、マーケティング・ツールを組み合わせること」(Wikipedia-マーケティングミックス)
と説明されています。といっても初めて聞いた人には、抽象的で分かりにくいかもしれません。
企業が立案したマーケティング戦略を、商品企画や広告宣伝、営業活動など実際の行動にスムーズに落とし込むためには、いくつかのフレームワークを組み合わせて使います。その代表的な例が、「4P」、そして「4C」などマーケティングミックスと呼ばれる考え方です。4Pとは、「製品(Product)」「価格(Price)」「プロモーション(Promotion)」「流通(Place)」のそれぞれの頭文字をとって名付けられました。
<マーケティングミックスの代表例「4P」とは?>
- 製品(Product):商品・サービス開発やブランディング
- 価格(Price):価格・支払方法など
- プロモーション(Promotion):広告宣伝活動
- 流通(Place):チャネル
たとえば、ワインを販売するにしても、「○年物」といった高級品か、大衆向けかによって、販売する製品はもちろん、価格(例:1本何万円もするか?1000円以下か?)や流通(例:高級百貨店か?スーパーか?)や、プロモーション方法(例:富裕層メディアか?マス媒体か?)など、望ましいマーケティング活動はまったく異なります。
製品・価格・プロモーション・流通。この4つの観点から、マーケティング戦略が顧客にとって魅力的なものになっているか?を整理してみます。そのうえで、顧客に伝わるメッセージが、整合性のとれている状態をつくり出すのです。
マーケティング理論が進化していくなかで、この「4P」を企業の視点ではなく、消費者の視点から見直してみようという流れが起こりました。それが、「4C」と呼ばれるフレームワークです。
<「4P」を買い手の立場から見直した「4C」>
- 製品(Product)=顧客価値(Customer Value)
- 価格(Price)=顧客にとっての経費(Cost)
- プロモーション(Promotion)=顧客とのコミュニケーション(Communication)
- 流通(Place)=顧客利便性(Convenience)
たとえばiPhoneを買うユーザーは、端末それ自体を欲しいのではありません。離れた友人と会話ができること、どこでもインターネットを使えて世界が広がること、いつでも音楽を楽しめること、など顧客にとっての価値にお金を払っているのです。その価値が、顧客に適切なコストや利便性で提供できているか?正しく伝わっているか?という点から、商品が顧客に届くまでのプロセスを見直していくのです。
マーケティング戦略から実行のプロセスとマーケティングミックスの位置づけ
このマーケティングミックスは、マーケティング戦略全体のプロセスのなかでは、「戦略をいかに実行していくか?」という下流の工程にあたります。マーケティング戦略の用語のなかには、「4P」や「4C」のほかにも、「3C」や「SST」などが出てきてややこしいので、一連の流れを説明しましょう。
戦略をたてるうえでのセオリーとしては、はじめに自分たちが置かれている環境を分析します。「市場」(Customer)「競合」(Competitor)、「自社」(Company)の3つの観点から分析するので、「3C分析」ともいわれます。
次に、「セグメンテーション」(Segmentation)「ターゲッティング」(Targeting)といって、市場のなかのどの顧客に標準を合わせるか?を絞ります。そのうえで、「ポジショニング」(Positioning)といって、商品をどう位置づけて差別化をはかっていくか?を定めます。そのうえで4P(または4C)を言語化して、戦略を実行へと移していくのです。
マーケティングミックスの分かりやすい事例
実際のビジネスでは、マーケティングミックスはどのように取り入れられているのでしょうか?
たとえばスターバックスでは、自社のビジネスを単に「コーヒーを売る」のではなく、お客様が友人と会話をしたり、考え事をするなど自由に過ごすことできる場所を提供することと価値を定義して、「サード・プレイス」(家でも職場でもない、第3の場所)と呼んでいます。そのような製品の価値があるからこそ、コーヒー1杯が300円台と高くても、また広告宣伝をほとんどしなくても、PRや口コミなどを通じて共感したお客様が集まってくるのです。
製品 (Product) |
価格 (Price) |
プロモーション (Promotion) |
流通 (Place) |
|
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スターバックス | 単にコーヒーではなく「サード・プレイス」を顧客価値に | コーヒー1杯300円台と高額 | 広告宣伝を行わず、パブリシティや口コミ、店頭看板のみ | 大都市中心の直営店がメイン |
ドモホルンリンクル | 年齢を重ねた女性の肌悩みを解決するための基礎化粧品 | 基本セットが1ヶ月で約36000円と高額 | テレビCMや新聞広告、折り込みチラシなどマスメディア | 電話やダイレクトメールを中心とした通信販売 |
ライフネット生命 | 20〜30代の子育て世代のための生命保険 | 死亡保障500円~、医療保障1000円台~など明確で低料金 | 検索エンジンやSNSなど、ネット上の広告や口コミ | インターネットからの販売に限定 |
また、テレビCMで有名なドモホルンリンクル(再春館製薬所)は、年齢を重ねた女性の肌悩みの解決のための基礎化粧品を提供しています。テレビCMや新聞広告、折り込みチラシなどマスメディアを中心に広告宣伝に多額の資金を投入して見込み客を集めた後は、コールセンターのオペレーターがお客様の肌悩みに徹底的に寄り添ったコミュニケーションを展開。基本セットが1ヶ月で約36000円と高額ながらも、年間数万円から10万円を超えるようなロイヤル顧客を多く抱え、リピート販売によって収益を確立しています。
2006年に設立、「戦後初の独立系生保」として話題になったライフネット生命は、インターネット販売に特化。「保険のおばちゃん」による対面販売が一般的だった業界で、人件費や店舗費がかからないための「価格の安さ」を訴求。不透明という印象を持たれがちだった保険料の内訳をすべて公開するなどして、20〜30代の子育て世代の支持を集めました。検索エンジンやソーシャルメディアなど主にネット上でプロモーションを展開するとともに、コールセンターでの相談を夜10時まで受け付けるなど、顧客ターゲットにとっての相談しやすさを実現しています。
「4P」(または4C)について、はじめに定義を説明して、次にマーケティング戦略の全体像のなかでの位置づけを解説。最後に、ビジネスでの事例をお伝えしました。「分かりにくい」といわれることも多い「マーケティングミックス」ですが、あなたがマーケティング活動を行うときに使いこなせるようになるためには、自分の頭で考えてみることが大切です。街で売られている商品に、どのようなマーケティングミックスが当てはめられているか?ぜひ機会があれば考えてみてください。